MG 舞台と絵画について比較考察した章があります。
美術史の議論ではあまり扱われない主題ですね。
しかし歴史を振り返ると、ベルニーニやラファエロ、
レオナルド(・ダ・ヴィンチ)も舞台装置を(手がけています)。
DH そうだね。舞台装置や大がかりな背景画もデザインしている。
これも(『絵画の歴史』の中で)話したが
ファン・エイクは大きなアトリエを持っていたはずだ。
きっと衣装部もあっただろう。帽子の担当者もいたかもね。
《ヘントの祭壇画》にはすばらしい衣装が描かれている。
細部までリアルに描き込まれているんだ。
MG あれは実物を見ないと、想像では描けませんね。
DH そのとおりだ。衣服のひだなどは複雑だからね。
ファン・エイクのことをセザンヌのように
「孤独な画家」だったと考える美術史家もいる。
だが、そんなはずはない。
当時の画家は大きなアトリエを持っていた。
彼らは絵の具の調合についてメモを残さなかった。
紙に書いてしまえば――他人に見られて情報が漏れかねないからね。
ライバルを警戒したんだ。
『絵画の歴史』よりファン・エイク《アルノルフィーニ夫妻の肖像》
<目次>
序 画像、美術、そして歴史
1 画像と現実
2 徴をつける
3 影とごまかし
4 時間と空間を描く
5 ブルネレスキの鏡とアルベルティの窓
6 鏡と映像
7 ルネサンス:自然主義と理想主義
8 紙、絵具、複製される画像
9 舞台を描く、絵画を上演する
10 カラヴァッジョとカメラのような目付きの男たち
11 フェルメールとレンブラント:手、レンズ、そして心
12 「理性の時代」の真実と美
13 1839年以前と以後のカメラ
14 写真、真実、そして絵画
15 写真を使う絵画、使わない絵画
16 スナップショットと動く映像
17 映画とスチル写真
18 終わりのない画像の歴史
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