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対談「絵画の歴史」 デイヴィッド・ホックニー×マーティン・ゲイフォード

4. 舞台を描く 絵画を上演する

※日本語字幕をオンにしてお楽しみください。

MG 舞台と絵画について比較考察した章があります。
美術史の議論ではあまり扱われない主題ですね。
しかし歴史を振り返ると、ベルニーニやラファエロ、
レオナルド(・ダ・ヴィンチ)も舞台装置を(手がけています)。

DH そうだね。舞台装置や大がかりな背景画もデザインしている。
これも(『絵画の歴史』の中で)話したが
ファン・エイクは大きなアトリエを持っていたはずだ。
きっと衣装部もあっただろう。帽子の担当者もいたかもね。
《ヘントの祭壇画》にはすばらしい衣装が描かれている。
細部までリアルに描き込まれているんだ。

MG あれは実物を見ないと、想像では描けませんね。

DH そのとおりだ。衣服のひだなどは複雑だからね。
ファン・エイクのことをセザンヌのように
「孤独な画家」だったと考える美術史家もいる。
だが、そんなはずはない。
当時の画家は大きなアトリエを持っていた。
彼らは絵の具の調合についてメモを残さなかった。
紙に書いてしまえば――他人に見られて情報が漏れかねないからね。
ライバルを警戒したんだ。


『絵画の歴史』よりファン・エイク《アルノルフィーニ夫妻の肖像》

次回――「写真、真実 そして絵画」3月10日公開予定

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絵画の歴史 洞窟壁画からiPadまで

デイヴィッド・ホックニー&マーティン・ゲイフォード

翻訳 木下哲夫
図版310点掲載
判型:A4変
総頁:360頁
上製本
定価:本体5500円+税
ISBN 978-4-86152-587-2 C0070

<目次>
序 画像、美術、そして歴史
1 画像と現実
2 徴をつける
3 影とごまかし
4 時間と空間を描く
5 ブルネレスキの鏡とアルベルティの窓
6 鏡と映像
7 ルネサンス:自然主義と理想主義
8 紙、絵具、複製される画像
9 舞台を描く、絵画を上演する
10 カラヴァッジョとカメラのような目付きの男たち
11 フェルメールとレンブラント:手、レンズ、そして心
12 「理性の時代」の真実と美
13 1839年以前と以後のカメラ
14 写真、真実、そして絵画
15 写真を使う絵画、使わない絵画
16 スナップショットと動く映像
17 映画とスチル写真
18 終わりのない画像の歴史


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